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屍鬼
小野 不由美著「屍鬼」



「村は死によって包囲されている」
棺桶や卒塔婆を作っている外場村。古い小さな村は、閉鎖的にただ存在していた。
猛暑に襲われた夏、村人たちが一人そして二人と死んでいく。老人が多いせいだ、と猛暑のせいだといいながら、村人たちは、文字通り徐々に死に囲まれていく。
未知の疫病かと思われた事態は、移築された屋敷の住人も絡み、少しずつ変容を遂げる。


続きを読んでいるのではなく、勝手に進んでしまうこの焦燥感はたまらなく楽しい。
面白かった。
吸血鬼を取り扱った作品は、科学的な視点を交えて進めていくものが増えたけど、今回は疫病ということで、医師の視点で冷静に語られていくのが、前半。
冒頭というにはみっちりと、閉鎖している村の様子が語られることで、猛暑の中息が詰まる感覚が、頁をめくるごとに積もっていく。
後半は、ただ、作品にのまれるだけだった。


みっちりと語られることで、村人の一人一人がどんどんと身近になっていく。
そして、読み手が村に入り込んだとき、少しずつ世界が崩壊する。削られていく恐怖。
村の中心でありながら、異物でもある、若医者と若御院の立場が、対峙する格好になっているのだろうが、一言で言うには、複雑に絡んだ人間関係は、ただの恐怖妖怪物というにはずっしりと胸にかかった。


立場が違えば思いも変わる。


それが、痛いほどに伝わる。
じりじりとした恐怖は、屍鬼という存在を認識してからも続く。原因がわかった時点で、さらっと進むものも多い中、それをどう崩していくのか、狩られながら狩らなくてはならない感覚。
元自分の身内が、敵になっている悲しさ。
そして、屍鬼になった者も、寂しさに家族を同属にしたいと殺していく悲しさ。
屍鬼すらも感情が一人一人違うのだ。
人と情を交わせる生き物の捕食相手が人というのは、悲しい。
泣きながら殺すのも、餌だとわりきることも、悲しい。


夏野を泣きながら殺す徹と、死んでいるはずの元村人とすれ違い、まさかと振り返れば、ぞっとその姿を見つめる屍鬼。
悲しいと思いながらも、ひたりと狩られる恐怖、簡単に奪われる恐怖、様々な恐怖が詰まっていた。


結局村は、医師の旗振りで、屍鬼を惨殺していくことで人間が生き残ったが、結局「村」としては、死んでしまった。
物理的にはもちろん、尾崎の若先生と若御院の互いの立場を理解したうえで、性格を知り、しょうがないと諦めた時点で、もう村は死ぬしかなかったのだろう。


これは、若御院の人間への渇望と絶望の話だったのかもしれない。
もしくは、若先生の愛着と絶望の果てだったのかもしれない。
何度読んでも、果てがない。たまらない本だった。


「黒祠の島」も舞台は確か九州だったけど、屍鬼の舞台は鹿児島じゃなかろうか。
ふとそんな気がした。
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【2007/11/16 02:19 】 | 小説感想 | コメント(0) | トラックバック(0) | page top↑
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